どうしても捨てられなかった「花」という原点

IMA-ZINE INTERVIEW VOL.36

元気なまちで、今(いま)を生きる、元気な人(じん)にインタビューするコーナー。

8Peaks BREWING 代表 
齋藤由馬さん
Yuma Saito

INTRVIEW WITH KITAHARA JACKSON YU   TEXT BY TANAKA YUKIKO


八ヶ岳で、より豊かで洗練されたビールのある暮らしを体現したい
どうしても捨てられなかった「花」という原点

近年続々と新しい見どころが誕生している蓼科湖周辺。2023年5月ここにまた一つ新たなスポットが誕生した。
8Peaks 蓼科店だ。運営する8Peaks BREWINGは2017年にクラフトビールのブルワリーとして創業。地元食材やライフスタイルを意識したラインナップを着実に増やしながら6期目を迎えている。完成した新工場兼店舗を前に、代表の齋藤由馬さんにお話を伺った。


北原ジャクソン友(以下、北原):福井さんはご両親と一緒に移住をしてきて、その後また戻ってこられたんです由馬くん上田の出身だけど、茅野でブルワリーを起業したんでしたよね?

齋藤由馬さん(以下、齋藤):現在の上田市、旧丸子町の出身です。実家は切花農家でしたが、花というのは食べられないし、仕事は大変そうだし、正直やりたくないなと思っていました。
学校卒業後は東京で就職をしました。漢方を中心とした大手の製薬会社で、漢方薬を作る機械を開発していたんです。漢方薬の原材料というのはほぼ植物なんですが、あるときその中にうちの実家でも栽培している花を見つけました。正確には花ではなく根っこを使うんですが、飾るだけでお腹も膨れないと思っていた花が、こんなところで役に立っていると知ったんです。
その後東日本大震災が起きて、地方から都市圏に出てきて働いている人たちが地元のために何かできないかと考えるようになった。その頃都会での生活が自分には合わないなと感じ始めてもいたので、自分もそれまでの農産物加工技術を生かして地元で何かができないかと考えるようになったんです。

それで実家に帰ってきて花農家を手伝ったんですが、やはり合わなかった。それでいて「人の役に立つ花」を作りたいという気持ちがあって、結局花から離れられないんです。長野県の花栽培の歴史を調べていたら、ホップにたどり着いたというわけです。
茅野に初めてきたとき、冷涼で日照時間が長く、水はけがいい高原の気候がホップの生産に適しているのではないかと感じました。実はこの八ヶ岳山麓というのは日本で初めてのホップの契約栽培地なんです。そんなご縁から最初はホップ農家になろうと思ったんですが、ホップ単体では価値が生まれない。ホップを売るには、このホップを使ったらどういう香りがして、どういう苦味があってということが説明できなければダメ。ということはビールルを知らないといけない。それなら自分でビールを作ったらいいのではと思ったんです。

シチュエーションがビールをさらにうまくする

北原そこでやっとビールが出てくるんですね?

齋藤うなんです。その後ビールの勉強のためにドイツに行きました。とある地方の町でビアレストランに立ち寄ったとき、席がとなりになったおじさんに、「このお店で一番オススメのビールは何?」と聞いたら、「何をくだらないことを言ってるんだ」というふうに笑うんです。おじさん曰く「この街のビールが一番おいしいに決まってるじゃないか」と。そこでそのおじさんが飲んでいるものと同じビールを注文して飲んだら、本当にすごくおいしかった。やがて帰る時間になって、同じビールをボトルで買って帰りました。ところが、ホテルについて飲んだら、おいしいはおいしいんですけど先ほどのような感動がない。そこでおいしいビールを飲むには、おいしいビールだけではなく、それを飲むシチュエーション、外的環境も大切なんだと気づいたんです。日本には、ビールをどう飲んだらうまいのか、シチュエーションの話がない。そこに真剣に向き合っていこうと思いました。

おいしいビールと世界観を届けたい

北原じゃあこの新工場もそういう目的で作られたんですか?

齋藤この新工場建設の一番の目的は生産能力の向上です。ありがたいことに今の工場では手狭になってきて、よりよいものを、安定的に供給をするメーカーとしての責務を果たすために必要だったんです。
2つ目には「作る」と「売る」をセットにしたかった。なぜこのビールを飲むのかというブランド設定。差別化を図るためです。「八ヶ岳でビールのある暮らしを作る」という世界観を伝えるために必要だった。ビールメーカーだけど、それだけではなく、代替できないものになっていきたい。それをこの新工場から体現していければと思っています。
そのためにはまず、この地元の人にその恩恵を受けてもらいたい。そこからだと思っています。

I N F O R M A T I O N

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“いま”を生きる人へ。“いま”の生きた情報を。

生きているといろんなことがある。
嬉しかったり。悲しかったり。
失恋の夜が明けたかと思えば、ひとめ惚れの朝が来たり。
成功したあとには、 失敗ばかりの日々が続いたり。
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ふとした拍子にやんなっちゃったり。

いつだってぼくらは、
泣いて笑って、走って転んで汗まみれ。

でも、そのたんび、
いまより良くするもっと冴えたやり方。
いまから始まるバラ色の近未来。
いましか望めない遠い風景。
考えて、思いえがいて、考えて。

考えることは生きること。ぼくらはいまを考える。
そう、ぼくらは“いまを生きる人”なんだ。

そんな、イマジンたちに贈ります。

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