本棚の中につめこんだ本と人、そして街への思い

IMA-ZINE INTERVIEW VOL.26

元気なまちで、今(いま)を生きる、元気な人(じん)にインタビューするコーナー。

一般社団法人 まちライブラリー
まちライブラリー提唱者 磯井 純充
Yoshimitsu Isoi

INTRVIEW WITH KITAHARA JACKSON YU   TEXT BY TANAKA YUKIKO


2019年12月茅野駅直通商業施設ベルビア内にあるワークラボ八ヶ岳(以下WLY)の一画に、まちライブラリーが開設されました。それ以来、本を手にとる人の姿を目にするようになります。さらに今年6月にはスペースが拡大。本を介して人のつながりを創出するまちライブラリー。今回はまちライブラリーの創設者でもあり、今年からWLYの指定管理者としても茅野市と深く関わりを持つこととなった磯井純充さんにまちライブラリーの特徴やこれからについてお話を伺いました。


本のない図書館が生み出す人とのつながり

── まちライブラリーとはいったいどんなものなのでしょうか。

磯井純充さん(以下、磯井) ライブラリーというのは図書館という意味ですが、公共の図書館と違って最初から本があるわけではなく、持ち寄っていただいて始まる。それによってつながる街や人に意味があるんです。
 まちライブラリーは現在全国に940箇所ほど開設されています。プライベートな場所にあるものが9割。そのほかにも役所や病院のロビーや無人駅。自宅の前とかお寺や神社の中っていうこともあって、設置場所は本当に多岐にわたるんですよ。

── なぜまちライブラリーを始められたんですか?

磯井 儲私自身ずっと組織の中で働いてきましたが、その中では挫折もありました。組織の中で仕事をしていると、情熱を持ってやっていた仕事なのに手放したり人に引き継いだりしないとならないことがあります。そういうのを経験して仕事とは別にライフワークが必要だと思って、本での場づくりを始めたんです。
でもぼく自身はそんなに読書家っていうわけじゃないんですよ。強いていうなら本に囲まれているフェチ。(笑) 壁が全部本で囲まれていると落ち着くんです。(笑)

本には人を惹きつける何かがあるんです。ただの自己紹介って仕事の話とかになりがち。でも気になる一冊の話をするだけで心の扉があくんです。犬の散歩なんかに例えるとわかりやすいと思います。公園で知らない人にいきなり声をかけたら変だけど、犬を連れている同志が、犬の話をきっかけにしたら会話が弾んだりしますよね。そういう感じに似て、本はコミュニティを作るのにとても有用なんです。本があると空気が柔らかくなる。インターフェースになると思っています。

自分の役割と居場所を見つけてほしい

── 2年前にWLY内にまちライブラリーができましたが、そのころ茅野にはどんな印象をお持ちでしたか?

磯井 正直最初は茅野市ってどんなところか知りませんでした。
 2019年にこのWLYに講演に呼ばれたんです。その時、市内にとある方の別荘に蔵書がいっぱいあって、片付けも全部含めて譲り先を探しているというお話を聞いたんです。それでそれを譲り受けて通うことになりました。そうしたらここが東京より居心地がいいと気付いちゃった。東京は暑いし、人混みで生活するのはストレスだと感じるようになっていたんですね。今では東京との2拠点生活をしています。

── 先日はWSをお手伝いさせていただいて、市民の皆さんと本箱を作りましたね。

磯井 その節は本当にありがとうございました。本を寄贈してもらうのには意味があるんです。公共の図書館などの施設って、市民は利用するだけっていうことが多いですよね。それってさみしい社会だなと思ったんです。そこに自分の役割があったほうがいい。寄贈にはその一つですが、本箱まで作ってもらうとさらに愛着がわくと考えています。この本箱の一つ一つには見えない位置にナンバーがつけてあって、誰が作ったかわかるようになっています。見えるわけじゃなくても自分のものという意識が出る。2度3度行ってみようと思うし、その人の場所になるわけです。
 本は大量生産品で日本には7億冊あると言われています。全国どこでも同じものがありますから、どこの書店で買ってもいいし、図書館で借りてもいいですよね。
 でもここにある本には感想カードというのを入れています。まずは寄贈者が記入する。本を手にとった人がそれを読むと、その文章や文字から寄贈者がどんな人かを想像できる。そういう意味でここの本は一つしかない本になるんです。そしてまたその人が感想カードを書いていくことでつないでいくんですよ。
 また年間サポート会員(30,000円/年)というのを設定しています。長く続けていくためには行政や特定のスポンサーではなく市民のお金を入れて、市民が介入していったほうがいいと思っているんです。ぜひ積極的に関わって欲しいですね。

── 磯井さんが考える茅野市、そして駅前のこれからとは?

磯井 WLYは現在もすばらしい施設です。でもビジネス世代だけではなく、幼児からリタイヤ世代、男女や年齢の垣根なく市民の広場としてもあるといいと思っています。市民の動きとビジネスの場が隣り合っていることで、社会的な広がりができますし、茅野の発信になるのではと思っています。
 ここは場所柄観光客や別荘の人なども訪れますが、そういう人たちは地元の人と接したいと考えている人も多い。地元の人と触れ合うことってすごく重要です。茅野の市民がホストになって関係性を作る、そんな体験をしてほしい。そういうことができれば茅野はもっといい街になると思います。

I N F O R M A T I O N

まちライブラリー@My Book Station 茅野駅
〒391-0001 
長野県茅野市ちの3502-1  ベルビア2F
web:machi-library.org/where/detail/6138/


インタビューの様子は動画でもご覧いただけます。

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“いま”を生きる人へ。“いま”の生きた情報を。

生きているといろんなことがある。
嬉しかったり。悲しかったり。
失恋の夜が明けたかと思えば、ひとめ惚れの朝が来たり。
成功したあとには、 失敗ばかりの日々が続いたり。
あんなに前向きだった気分も、
ふとした拍子にやんなっちゃったり。

いつだってぼくらは、
泣いて笑って、走って転んで汗まみれ。

でも、そのたんび、
いまより良くするもっと冴えたやり方。
いまから始まるバラ色の近未来。
いましか望めない遠い風景。
考えて、思いえがいて、考えて。

考えることは生きること。ぼくらはいまを考える。
そう、ぼくらは“いまを生きる人”なんだ。

そんな、イマジンたちに贈ります。

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