内なる声に耳を傾け自分のためだけの時間を過ごせる森

IMA-ZINE INTERVIEW VOL.63

元気なまちで、今(いま)を生きる、元気な人(じん)にインタビューするコーナー。

株式会社とわいろ | 代表 廣瀬 明香さん
株式会社Kotobito | 代表取締役CEO・プロデューサー 石島 知さん

INTRVIEW WITH KITAHARA JACKSON YU   TEXT BY TANAKA YUKIKO


2025年5月、富士見町の森の中に誕生した「森と、ピアノと、 」。ここでは誰もが知らず知らずのうちに背負う「役割」を脱ぎ、内なる声に耳を傾けられる。そして本当の自分から湧き出るエネルギーを、誰の目を気にすることなく、思い思いの方法で表現できる場所だ。今回は「森と、ピアノと、 」誕生秘話を、廣瀬明香さん、石島知さんご夫妻に伺った。


自分らしく生きられているか

北原ジャクソン友[以下、北原]:すごい場所を作られましたね。どういうきっかけでここを作ろうと思われたんですか?

廣瀬明香さん[以下、廣瀬]:最初のきっかけは医師である父が難病にかかったことで、余命を生きる姿にすごく揺さぶられたことでした。自分自身が自分らしく生きられているのか、豊かに生きているのかというのをすごく考えさせられました。
ピアノは小学生の頃に習っていたんですが、基礎をしっかりというより好きな曲を弾く感じで、誰かと比較されることもなく私にすごく合っていたんです。でも次第に人前で表現する雰囲気が怖くなってしまって、自分で楽しむだけになっていきました。

北原:どのくらいの時期からこの事業を考えていたんですか?

石島知さん[以下、石島]:彼女の幼少期の経験やお父さんの死、もうひとつ大きな出来事としてはやっぱりコロナですね。

廣瀬:緊急事態宣言の時、夫がずっと家にいて仕事をしていたんです。ひとりの時間がなくなりすぎて、そのときに「森の中でピアノが弾きたい」っていう欲求に気づきました。それまでそういう願望を表に出すことがあまりなかったので、なんかその心の声は無視しちゃいけないような気がしたんです。

石島:最初はビジネスにできるとはまったく思わなくて、2人で電子ピアノを担いでいろいろな森に行って実際に弾いてみたんです。それで満足するんだったらそれでもいいと思っていました。その後、これをサービスとして提供するっていう意味ってどのくらいあるのかみたいなのを検証していった感じです。

役割を捨てて、自分に戻る

廣瀬:もともと長野が好きだったのと、特にこの八ヶ岳エリアが好きだったんです。でも詳細な場所は非公開にしています。ここのコンセプトは「とっておきのおひとりさま時間」なんですが、誰でもふらっと来られる場所だったら、弾いていても誰かに聴かれているかもっていう不安があると思う。心理的に安心して来られるようにしようと思っていました。
1組限定の宿とかはよくあるんですけど、ここは「ひとり」。夫と一緒に来たら妻という役割を演じてしまうし、子どもといたら母親でいなきゃいけない。どうしても役割を背負ってしまう部分てあると思うので、「ひとり」で来てほしいっていうのはありました。

北原:ひとりになりたいっていうニーズはありますよね。「籠る」とかだったら簡単かもしれないですけど、解放されながら一人になれるってなかなかない。

廣瀬:そうなんです。防音施設とかの閉鎖空間に隔絶されるっていうのとはちょっと違うなと。森の中で自然に包まれて、自分も自然の一部になっているような感覚がいいと思っています。

北原:まさしく自然の一部に溶け込むこの建物もすごいですね。

石島:彼女には「森と、ピアノと、 」のある一日をエッセーに書いてもらって、それを表現できる建築家さんを探したんです。この丸っこい感じとか曲線とか、建築的な制限とか作りやすさとかを考えていたらできなかったし、リクエストすらできなかった。いろんなことにチャレンジをしたいっていう建築家さんに出会えたからこそできたと思います。こそできたと思います。

廣瀬:あとは地元の方たちから応援されないプロジェクトは嫌だったので、地元の方との関係性は大事にしたいと思っていました。

石島:実際いろんな人とつないでいただいて、サポートしてもらいました。みなさん「いいね」「おもしろいね」って感じで前に進めようとしてくださった。この地域や長野県の方々の心の広さみたいなものを感じて、めちゃめちゃ感謝していますし、恩返ししたいな思っています。

森を育て、建物を育て、
最高のおひとりさま時間を

石島:実際利用された方の声はどうですか?

廣瀬:やっぱり一番大きいのはデジタルデトックスに関する声ですね。ここでは自分の内から湧き出るような表現に耳を傾けてほしいので、スマホなどは預けていただいています。ここは自然に満ちあふれているので、なかったらなかったであっという間に時間が過ぎるんです。「子どもの頃みたいに純粋に楽しんで表現をできる時間はすごく久しぶり」って言っていただけています。

石島:作曲をする人なんかには「今まで作ろう作ろうと思ってやってたけれど、ここに来たらさらっと出た」と言われますね。作ろうというよりは作らされたみたいな感じ方をしている方が多い。もしかしたらこの場の持つ力がそうさせているのかなと思っています。

廣瀬:「森と、ピアノと、 」って最後が点で、そのあとに余白があるんです。私にとっては「森」で「ピアノ」を弾くことが表現するツールですが、それは人によって違うと思うんです。だからその余白に自分の好きなものを当てはめてもらいたいと思っています。

北原:後に今後の展望を教えてください。

廣瀬:ここに何を求めるかや、何を心地いいと感じるかは人により違うと思うので、ここならではの空気感を大切にしつつ、来てくださる方がとっておきのおひとりさま時間を過ごしていただけるように育てていけたらいいなと思います。

石島:まずはこのサービスはしっかりと完結させていきつつ、ずっと閉じていたいわけでもないので、大事な思いとか、哲学的な背景がある人にこの場を有効活用してもらえるような方法も徐々には考えていきたいと思っています。


I N F O R M A T I O N

森と、ピアノと、
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>“いま”を生きる人へ。“いま”の生きた情報を。

“いま”を生きる人へ。“いま”の生きた情報を。

生きているといろんなことがある。
嬉しかったり。悲しかったり。
失恋の夜が明けたかと思えば、ひとめ惚れの朝が来たり。
成功したあとには、 失敗ばかりの日々が続いたり。
あんなに前向きだった気分も、
ふとした拍子にやんなっちゃったり。

いつだってぼくらは、
泣いて笑って、走って転んで汗まみれ。

でも、そのたんび、
いまより良くするもっと冴えたやり方。
いまから始まるバラ色の近未来。
いましか望めない遠い風景。
考えて、思いえがいて、考えて。

考えることは生きること。ぼくらはいまを考える。
そう、ぼくらは“いまを生きる人”なんだ。

そんな、イマジンたちに贈ります。

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