

[VOL.33]
ごはんとコーヒーとお酒 bik. | 伊藤 良貴さん(右)
日用品とクラフトビール yuit | 原田 敬一さん(左)
TEXT BY TANAKA YUKIKO

2024年6月、茅野駅東口から歩いて数分の場所にあるラーメン屋の跡地に「ごはんとコーヒーとお酒bik」と「日用品とクラフトビールyuit」、2つの店がオープンした。それぞれの店を経営する伊藤良貴さんと原田敬一さんは、互いに茅野で生まれ育った幼なじみ。大人になり、都会に出て、お互い家庭を築いてもなお、二人を魅了してやまない山の魅力と、故郷で手に入れた居場所とは。

まさかの見切り発車!
伊藤良貴(以下:伊藤):ぼくら小・中・高、大学も学部まで一緒で、子どものころから一緒に釣りやキノコ取りをしてたんです。お互い子育てがちょっと落ち着いてきたところで、またやりたくなった。
原田敬一(以下:原田):今朝も朝5時半集合で採ってきたよね。(笑)
伊藤:そうそう!(笑)
当時茅野では若い人がいろいろやり始めていたんで、採ってきたキノコを鍋にして飲んでいたら、自分たちもなんかやりたいねという話になるじゃないですか。ぼくらにはもう1人メンバーがいて、ここはその彼が押さえていた物件だったんですが、一部使わない部分があるということで敬一君と一緒に何かやろうって話になりました。
原田:それで何屋にするか分かんないままDIYが始まったんだよね。電気や設備工事以外は全部自分たちで。レンガも貼ったし、天井も壁も自分たちで塗りました。
伊藤:そうしたらある日、軽自動車1台分くらいのお値段がするエスプレッソマシンを譲ってもらえることになったんです。そのうえ上諏訪にあるコーヒー店アンバードの店主クロさんがコーヒーのあれこれからエスプレッソマシンの使い方まで教えに来てくれることになった。おかげでめっちゃおいしいコーヒーが入れられるようになったんですよ。
原田:そんなことがあってお店の方向もなんとなく決まっていったんだよね。


お気に入りを詰め込んだ店
伊藤:それで最後の最後に冷蔵ショーケースが舞い込んできた。
原田:それならと酒販の免許を取って、「yuit」では雑貨と一緒にクラフトビールも売ることにしました。缶なら気軽に買ってもらえるしお土産にもいい。パッケージにもこだわった目でも楽しめて飲んでも楽しめるものを選んでいます。雑貨やビールでライフスタイルそのものを提案できたらと思っているので。
伊藤:カフェの名前「bik.」は、キノコを入れる腰ビクから取りました。「お気に入りを入れる」っていう意味も込めて。
原田:「yuit」の方はフランス語の8「huit」から考えて、「h」の発音は馴染みがなくてわかりにくいから「y」に変えて「yuit」とした造語です。
伊藤:お客さんを見ていると、友だちと食事して、おしゃべりして、買い物をする、それがこの中で完結するのがいいんだなあと思います。それに不思議とお客さま同士が友だちになっていくんですよね。別々に来たはずの人が仲良くなって、最後には一緒に飲んでるっていうパターンがよくある。それだけ居心地良いのかな。

人をワクワクさせる山の遊び方
伊藤:ぼくらは合同会社キノコブラザーズっていうのを立ち上げて、「bik」もその1事業なんです。
原田:最初のころは夜営業してなかったんで、毎週自分たちで企画したイベントをしてたよね。今はだいぶ減ったけど。
伊藤:そう。これからはいろんなお店とコラボして月一くらいのペースでイベントがあるといいなと思っています。
原田:「yuit」ではもっと八ヶ岳の作家さんのものとかを揃えていきたいと思っています。地元の人はもちろん、観光の人たちに向けて何かやれるといい。店にあるピアノは吉祥寺の知り合いのカレー屋さんから譲り受けたものなんですけど、調律もバッチリなので、これからライブなんかもできればいいかな。
伊藤:カフェもクオリティには自信がある状態なので、お客さんが増えていけばいいな。そしてキノコや釣りを絡めたツアーやオリジナルイベントも企画して、カッコだけじゃない生粋の山育ちの楽しみ方を伝えていけたらいいなと思ってます。とにかく俺らが楽しいと思えること、アイデア出してニヤニヤできるやつを展開しつつ、合同会社キノコブラザーズぼくらの今の一番ミッションは「継続」。なくなるわけないけどね。絶対やめないからね。(笑)



I N F O R M A T I O N
