[IMA-ZINE INTERVIEW VOL.58]
元気なまちで、今(いま)を生きる、元気な人(じん)にインタビューするコーナー。
野村ユニソン株式会社 代表取締役社長
野村 高城
Takaki Nomura
INTRVIEW WITH KITAHARA JACKSON YU TEXT BY TANAKA YUKIKO
発見と邂逅
à La Cave de Unison
茅野市に本社を置く野村ユニソン株式会社は、言わずと知れたものづくりの会社だが、同時に洋酒の輸入販売を手掛けるインポーターでもある。フランス ロワールにはブドウ畑とワイナリーを所有し、日本における自然派ワインの普及に一役買ってきた。小売用店舗である「カーヴ・ド・ユニソン」は昨年リニューアル。弊社では新築設計に関わるとともにブランディングにも携わらせていただいた。ものづくりの会社が考えるワイン作りとは、その思いを代表取締役社長 野村高城氏に伺った。
ものづくり企業が挑んだ
ワインの世界
北原友(以下北原):本日は野村ユニソン株式会社社長の野村社長にお話をお聞きしたいと思っております。まずは事業内容を教えてください。
野村高城(以下野村):当社は70年前に製造業として創業し、工業用バルブ部品の製造から事業がスタートしました。その後、事業を拡大し、自動車部品、ガス器具部品、産業用の機械装置、液晶・半導体関連の製造装置、検査装置、搬送装置などを手掛けるようになりました。近年では、産業用ロボットや物流倉庫内で人の作業を支援するロボットの開発・製造などにも取り組んでいます。
北原:製造業として広く認知されていると思いますが、なぜ酒販事業をされることになったのでしょうか?
野村:約35年前に酒類販売事業を立ち上げまして、当初はブランデーの輸入と販売をしていたのですが、その後ウイスキーやワインなど、洋酒全般を手がけるようになりました。当社の創業者は私の祖父ですが、諏訪地域のホテル経営に携わっていた時代がありました。その時の経験を活かし、当時諏訪地域では珍しかった洋酒を手頃な価格でお客様に届けたいという思いで事業をスタートさせたと聞いています。
北原:最近ではワインのイメージが強いと思いますが、ワインに舵を切り出したのはどういうタイミングだったんでしょうか?
野村:大きな変化があったのは今から約20年前のことです。それ以前からワインの取り扱いはしていましたが、当時日本では珍しかった自然派ワインを扱う企業から事業を引き継ぐことになりまして、そこから本格的に自然派ワインの取り扱いを開始することになりました。
自然派ワインの中にも様々な種類があり、癖のあるものだったり、一般的には馴染まないものもあったりしたので、当時は敬遠されがちでした。その後、少しずつ自然派ワインを造る生産者が増えてきて、認知されるようになってきました。当時は東京などの都市部だけで主に飲まれていましたが、時代の流れとともに全国的に楽しまれるようになっています。
北原:社長もお酒を飲まれると思うんですが、ワインはもともとお好きだったんですか?
野村:もともと自分の会社で取り扱いのあるワインは飲んでいました。より身近に感じられるようになったきっかけは、仕事でフランスに行ったときに、ワインの生産者と直接お話したことです。ただ単に「おいしいものを造れば良いわけではない」というワイン造りに対する考えや想いを聞いて、非常に興味を持つようになりました。生産者の生き様だったり、表現したいものだったり。自然派ワインというのは癖があるものもあります。それを個性と言えるのか難しいところですが、生産者としては自分の考えるスタイルのワインを飲んでもらって、それをおいしいと思ってもらえるなら、それが一番良いと思っている方がとても多いのです。もちろん生活していかなければならないので、商売でありながらも、それを超えたものを造り出しているのだと感じて、興味深く思いました。
北原:売れるワインを造ればいいだけではなく、それぞれにこだわりがあるんですね。
フランスに自社ワイナリーも持たれているそうですね。
野村:そうですね。2008年にフランスのロワール地方、ナント近郊でブドウの栽培からワインの醸造を始めました。フランス国内での販売はもちろんのこと、世界各国への輸出も行っています。
自然波ワインとの
出会いがもたらした転機
北原:フランスでワインを造られているマルク・ペノさんとは、どういう方なんですか?
野村:一言で言えば鉄人ですね。自然派ワインの業界を牽引するレジェンド的存在です。ロワールのナント近郊に畑を持ち、特産の「ミュスカデ」という白ブドウを栽培しています。「ミュスカデ」で造られるワインは、簡単にいうとさっぱり、すっきりしていて軽やかなものが一般的ですが、マルク・ペノの造る「ミュスカデ」のワインは常識を覆す、「果実味溢れるアロマティック」なもので、従来のミュスカデの概念を超えたワイン造りをしています。
この地域では、大量生産し、安価に販売するのが一般的なスタイルです。しかしマルク・ペノは、量よりも質を重視し、とにかく良いものを造りたいという強い想いを持っています。生産量は少ないものの、一般的なミュスカデのイメージを覆す、素晴らしいワインを生み出しています。
ブドウの栽培においても厳選を重ね、質の良いブドウだけを使用します。果汁を搾る際も、通常より長い時間をかけて丁寧にプレスし、ブドウが持つ最大限のポテンシャルや旨み、果実味を引き出します。じっくり時間をかけ、最高のワインを生み出すことが彼の基本的な哲学です。
北原:それは飲んでみたいですね!
実はワインは自分にとって少し縁遠い存在でした。格式が高く、理解するには深い知識が必要なのではないかと感じていて、「自分には分からない世界なのかもしれない」と思っていたんです。でも、今回の野村ユニソンさんの新築プロジェクトに関わらせていただいたことをきっかけに、少しずつワインに興味を持つようになりました。
お店で生産者の思いやワインの特徴を聞きながら選ぶ。ワインを開ける瞬間のワクワク感を楽しむ—。そして、その一杯を味わいながらワイナリーの風景を思い浮かべる。そんな楽しみ方ができるようになりました。本当に楽しくて1日1本以上飲んじゃうんです。
野村:気持ちは分かりますけど、それは飲み過ぎです(笑)。
北原:いやついつい(笑)。
野村:自然派ワインの一つの特徴かもしれませんけど、無理して飲まなくても飲めちゃう。何も引っかかるところがないというのが特徴なのかもしれませんね。体に負担をかけないというところはあるかもしれないです。
八ヶ岳の麓から
世界へ届ける未来を見据えて
北原:最近県内でも東御とか塩尻、さらに八ヶ岳西麓ワインバレーなどワイナリーが増えてきていますが、その辺どうお考えでしょうか。
野村:カーヴ・ド・ユニソンは基本的には自社の輸入した商材を取り扱う店舗でした。店舗運営をして10年以上が経過していますが、特にこの5年ほどの間には、ご来店いただくお客様から「長野県産のワインはないのか」という問い合わせを多くいただくようになりました。
また、偶然にもお客様として、東御市でワインを造られている方が定期的にご来店いただいていました。そのご縁で、一度その方のワイナリーを訪問したことがありまして、色々なお話をうかがう中で、実際にワインを試飲させていただきました。その時に、こんなにおいしいワインが長野県にあるということを初めて知り、さらにワイン造りに対する考え方で非常に共感する部分がありましたので、ぜひ取り扱いをしたいと思ったのです。
それをきっかけに、県内各地の生産者の方々とお会いするようになりまして、非常にポテンシャルを感じました。ここまでおいしいワインを造っている方が多くいるのであれば、販売してみるのも良いのではということになりまして、一昨年から小売だけですが、長野県産のワインを中心に販売をしています。
八ヶ岳西麓ワインバレーについてもご紹介いただき、現在は原村のワインを取り扱っています。まだ取り扱い数は少ないですが、地元である諏訪地域のワインも、今後ご縁があればさらに販売していきたいと考えています。諏訪地域は気候的にもブドウを造るのに適していると思いますし、寒暖差もあるということで非常に良い環境であると思っています。
北原:最後にこれからの展望をお聞かせいただければと思います。
野村:昨年、この新店舗を設計していただき、無事オープンすることができました。おかげさまで開店以来多くのお客様にご来店いただき、大変ありがたく思っております。
先ほどもお話したように、自然派ワインはフランスでも日本でも、色々な考えを持たれた生産者が多くいます。当社も最新の情報やトレンドを追いながら、良い商品をできるだけお求めやすい価格で皆様にお届けしたいと努めています。きっとご満足いただけると思っておりますので、ぜひお立ち寄りいただいて、お気軽に声をかけていただければと思います。
野村ユニソン株式会社 代表取締役社長
野村 高城
PROFILE 1982年、長野県諏訪市生まれ。東海大学で経営工学を学び、2007年に野村ユニソンへ入社。2009年から2年間、トヨタ自動車へ出向し、トヨタ生産方式を推進する中枢部門にて、社内工場や仕入先の改善指導を担当。2011年、野村ユニソンへ復帰後、「生産革新部」を新設し、トヨタで得た知識・経験を展開。2021年、代表取締役に就任。
株式会社イマージ 代表取締役社長
北原 友
PROFILE 1984年長野県茅野市生まれ。日本大学建築学科を卒業後、インディーズバンドを経て、2010年イマージに入社。建築事業に加え、自社経営の飲食店やフィットネスジム、数多くのクライアント案件においてブランドマネージャーを務める。2020年より現職である代表取締役社長に就任。経営理念「元気なまち」を掲げ、茅野市を中心に地元の発展の最前線に立つ。
I N F O R M A T I O N
カーヴ・ド・ユニソン
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長野県茅野市ちの659-8
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