[IMA-ZINE INTERVIEW VOL.46]
元気なまちで、今(いま)を生きる、元気な人(じん)にインタビューするコーナー。
茅野市DX企画幹・リードアーキテクト、組合立諏訪中央病院 医師
須田 万勢
Masei Suda
INTRVIEW WITH KITAHARA JACKSON YU TEXT BY TANAKA YUKIKO
デジタル技術の活用により、地域の医療課題の解決や市民の健康づくりを目指すことを国から推進されている地域、デジタル田園健康都市。長野県茅野市も2022年から国の指定を受けている。そんな街で、医師として勤務しながら、市職員としても活動を続けるのが、須田万勢さん。須田先生が掲げるミッションとはなんなのか、二足の草鞋を履いている先生が描く、地域のヘルスケアとはどのようなものなのか、お話を聞いた。
DX=デジタルトランスフォーメーション=デジタル技術で社会や生活を変革すること
DXとヘルスケアの意外な相性。
北原ジャクソン友[以下、北原]:先生は、医師兼茅野市役所職員という、かなり珍しい働き方をされていますね。
須田万勢さん[以下、須田]:諏訪中央病院が「ヘルスケアとデジタル」という領域について大きな関心があり、茅野市民のよりよい健康づくりのため、市役所のDX推進課に出向している形になります。
北原:茅野市は、デジタル田園健康特区(以下、デジデン特区)としても注目されている街です。先生は具体的にどのような取り組みを行っているんですか?
須田:株式会社リーバーさんの開発する医療相談アプリ「LEBER for School」を茅野市の小中学生にいち早く導入してもらい、夜間や休日でもチャットから体調の相談ができるという仕組みを作りました。また、在宅ワークによる心身の健康を回復するプログラム「ウェルネステレワーク」を地元のホテル事業者さんとともに開発し、市民の健康づくりだけでなく、地元企業の活性にもアプローチできるような場づくりも行っています。
北原:新しくありながら、親しみを感じられるような取り組みですね。
須田:DXと聞くと小難しいキーワードに感じますが、身近な課題や不満を解決するためにデジタルが活用されて初めてDXと言えると考えています。「LEBER for School」も「ウェルネステレワーク」も、高い技術がなければ実現できないような超先進的なものではありません。むしろ、同じ課題を抱えている他の自治体や民間企業も取り入れることができる、気軽さが重要なのです。「さまざまな地域が抱えている課題に、デジタルの力で取り組む」ための第一歩を提示することが「デジデン特区」としての役割なのだとも考えています。
DXが主役になってはいけない。
北原:これまでの取り組みの手応えはいかがですか?
須田:LEBER for School」では、医療をより身近なものに感じてもらえるきっかけを作ることができたと思います。患者と医師が直接会わなくても、チャットを通じて日常的に相談できるようになったのは大きな変化です。医療現場の視点から言えば、小児の診察を担当していた「かかりつけ医」の負担軽減のための規制緩和の提案にも役立てられたと思います。
「ウェルネステレワーク」に関しては、市民の健康づくり、参加企業の健康経営の推進、地元の企業との協働ができたりと、”三方よし”な状態を叶えられたと思います。協力いただいたどのホテル事業者さんも、本当に素敵な体験を提供してくれました。サウナから見た大自然の景色と、ウェアラブルデバイスの数字を見て「ととのうって、こういうことなのか!」と納得する体験は、参加者に大きなインパクトを残してくれました。
北原:DXの捉え方も変わりそうですね。
須田:DX推進という言葉はよく耳にしますが、DXが主役になってはいけません。あくまで現場の人が主役で、その人たちの負担が軽くなったり気分がよくなったと感じる裏側で「実はDXが役立っていました!」くらいがちょうどいいんです。DXを推進する現場は、まずはその現場がどうなることが理想なのかを考えてみるといいと思います。それを叶えるためにDXをどう活用できそうか。そんな「現場のデザイン」をしてみることがDXの一歩なんですよ。
街の人にもっと身近な
病院でありたい。
北原:最後に、諏訪中央病院ではクラウドファンディングにも挑戦されていましたね。
須田:これはスタッフ達が率先して取り組んだプロジェクトで、ありがたいことに本当に多くの方からご支援をいただきました。病院がクラファンをするなんて珍しいとは思いますが、諏訪中央病院が茅野市のみなさんの期待を背負っていること、茅野市のみなさんに支えられていることを実感しました。街と病院の新しい関係性を発見する、大きな意味のある取り組みになったようにも思います。
須田:これからの茅野市、諏訪中央病院の発展が楽しみですね。お話ありがとうございました。
インタビューの様子は動画でもご覧いただけます。