[VOL.26]
お話しを伺ったヒト
ホープロッヂ乗馬牧場 | 木元 英樹さん
TEXT BY TANAKA YUKIKO
白樺湖からさらに細い山道を5分ほど上ると、ホープロッヂ乗馬牧場が見えてくる。創業は昭和48年。そこにある建物はすべて創業者をはじめとしたスタッフの手作りだ。建物の入り口に立って振り返ると、車山へと連なる高原を見渡すことができる。ここはロッジの宿泊と乗馬体験やレッスンができる牧場で、現在は10名弱のスタッフと12頭の馬がいる。ここで30年間、馬たちの世話や調教を行っている木元英樹さんにお話を伺った。
訪れる人を魅了する、
白樺湖の風土
九州の出身で、元は建築関係に興味があったので、創業者でもある先代が建てたログハウスを見たくてここに来たんです。そこで馬に関わる仕事もいいなあと思ってここで働くようになりました。
亡くなった先代がここを開拓して、最初は自分たちの生活のために馬を飼うようになった。それが始まりと聞いています。うちにいる馬はクォーターホースという品種で、元々は牛を追うカウボーイが乗るように改良された品種で、小回りが効くのが特徴です。
馬に関する仕事というと、主に馬の世話、乗馬のインストラクター、そして馬の調教です。主に関東、東海からのお客様が多いですね。中には地元でも乗馬を習われている方もいますが、やはりなんと言ってもこの白樺湖の爽やかな気候の中で馬の背に乗るのは格別なんだと思います。
馬という生き物を理解する
馬は大きな生き物なので、人間が怪我をしないように注意することが気を使うところですね。大事な仕事の一つに調教があります。犬の躾なんかでは食べ物をご褒美にやることが多いですよね。でも馬は草食動物なので、食べ物をもらうことに特別な感覚がないんです。どちらかというと危機から身を守ることが大事な生き物なんです。なので、その習性を利用して、負荷をかけてそこから逃れたい気持ちを利用して調教していきます。
実は馬は人間に対して愛着を持たないんです。馬同士は親しみがあるようで、仲間がいなくなると寂しがりますが、人間に対してそういう感情を持つことはありません。個体によって性格の差もありますが、私たち人間は総じて馬としての特性を大切に考えて接することが大切だと思っています。どれかだけを贔屓したり、過度に愛着を持ったりするのではなく、平等に接することが大事です。馬というのは、こちらが漠然と愛着を持って接していればコミュニケーションが取れるようになる、という生き物ではありません。
もう一つの大きな仕事に、各地のお祭りやテレビや映画の撮影の仕事があります。お祭りでは県内はもちろん、山梨や愛知まで行くことがあります。どれも武者行列といった戦国時代を表したお祭りで、馬と一緒に行って参加するんです。
動物と歩む仕事の未来
僕がここにきたのはバブルが落ち着いた頃でしたが、今と比べるとずいぶん賑やかでした。時代の流れは感じますが、今くらいの方がのんびりじっくり馬との時間に向き合えていいのかもしれないとも思います。やりがいがある仕事だなあと思う反面、生き物相手ですからうまくいかないこともある。だけどスタッフやお客さんとそうした馬のことを共有できることがいちばんの魅力だと思っています。動物に対する考え方も変わってきましたので、馬を労働させるということがいつまでできるかわかりませんが、大事なことを若い世代に伝えて世代交代をしながら続けていければと思っています。
I N F O R M A T I O N
ホープロッヂ乗馬牧場
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