この街のそこかしこ、職人の息吹をたどってみたら…

[VOL.21]
— お話を伺った方—

株式会社イマージ|川倉豊秋さん

TEXT BY TANAKA YUKIKO


主に建具や家具の製作をする木工職人の川倉豊秋さん。市民に親しまれる飲食店で、またあるときは観光客をもてなすホテルで、川倉さんの木工は生かされている。特に日本の伝統装飾である組子は、和の美しさと自然のぬくもりを兼ね備え、さまざまな場所で存在感を発揮している。そんな川倉さんに木工職人の仕事についてお話を伺った。


 商業デザインにも重される 
 木の魅力とは 

親父が木工職人を始めて、兄、自分と継いできました。自分の家といってもゼロから。うちは「棺桶以外はなんでも作る」って言うくらい、頼まれればなんでも作ってたんです。親父の後を継いだ兄が亡くなったときに工房を畳もうかと思ったんですが、イマージの北原会長に言っていただいて2017年からイマージの木工部としての稼働が始まりました。
なんでイマージが木工を必要とするか。木の魅力はなんと言ってもあったかみじゃないですか? 今は外国産の木材が入ってこないこともあって、ほとんど国産の木材。スギやヒノキが多いんです。どちらもわりと柔らかい木材です。広葉樹は硬いけど、狂いが大きいからなかなか難しいし、乾燥に時間がかかる。針葉樹は天然乾燥でも2年ほどで使えるようになります。人工乾燥すればもっと早いんだけど、できれば自然に乾燥させたものがいいんですよね。スギもヒノキもいい香りがするでしょう? これは木の油の匂いなの。人工乾燥した木は、この油が全部抜けちゃうんですよ。そうすると木としての粘りもなくなるし、質が落ちちゃうんです。

 ものづくりは 
 引き算の積み重ね 

社長曰く、諏訪っていうのは組子の有名どころだったらしいんです。組子っていうのは日本建築の欄間とか書院造に使われていたもので、建具屋が作っていました。だけど今は建具屋さんが少なくなってしまった。うちも親父は昔作ってたんだけど、俺は作ったことはなかったんですよ。こうして図案はあるんだけど、作り方は書いてないの。だから最初は数学の参考書を買ってきて勉強しましたね。ピタゴラスの定理とか三角関数を使うとできるんですよ。
新しいデザインを作るたびに、どうしたらできるのかを図案から工程を考えていく。ものづくりっていうのは、引き算の連続なんです。こういうものを作りたいっていう完成品から工程を引き算しながら考えたり試作したりする。ただ完成しても次はどうすればもっと早く作れるのかを考えちゃう。今までにOKと思った仕事は一つもないよね。これは一生続くと思います。

 ゴールのない職人という生き方 

なんだろうねえ。もう仕事の虫にさせられちゃったよねえ(笑)。ぼくらは職人であって、サラリーマンじゃないから、盗み見て仕事を覚えたんですよ。教えてなんかくれないわけ。今の若い人に向かってそれをやれとはとても言えない。でも職人だから作ってなんぼで、言われたことだけをやっていればいい世界じゃないわけです。今は機械を使う部分も多くて手作業でやることはほとんどないんですけど、都度考えなきゃいけないし、調整したり削ったりします。それはもう0.1ミリ、それ以下の世界だから機械じゃ出せない。でもそれって感覚的なところが大きいから教えようにも教えられないんですよ。
それでも会長さんからは70歳になるまでは引退しちゃいけないって言われてますし、工房には若い人もいるのでまだがんばります。

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“いま”を生きる人へ。“いま”の生きた情報を。

生きているといろんなことがある。
嬉しかったり。悲しかったり。
失恋の夜が明けたかと思えば、ひとめ惚れの朝が来たり。
成功したあとには、 失敗ばかりの日々が続いたり。
あんなに前向きだった気分も、
ふとした拍子にやんなっちゃったり。

いつだってぼくらは、
泣いて笑って、走って転んで汗まみれ。

でも、そのたんび、
いまより良くするもっと冴えたやり方。
いまから始まるバラ色の近未来。
いましか望めない遠い風景。
考えて、思いえがいて、考えて。

考えることは生きること。ぼくらはいまを考える。
そう、ぼくらは“いまを生きる人”なんだ。

そんな、イマジンたちに贈ります。

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