[IMA-ZINE INTERVIEW VOL.22]

元気なまちで、今(いま)を生きる、元気な人(じん)にインタビューするコーナー。
呉竹鮨 代表 矢野哲也
INTRVIEW WITH KITAHARA JACKSON YU TEXT BY TANAKA YUKIKO
JR茅野駅東口から徒歩1分の場所にある江戸前寿司の名店「呉竹鮨」。今回お話を伺ったのは2代目代表であり寿司職人でもある矢野哲也さんです。東京で修行をした先代が開いたこのお店には、食を通じて地元の人を喜ばせたいという思いが詰まっています。イマージでは、平成27年に店舗リニューアルをお手伝いさせていただきました。店舗の内装工事はもちろんのこと、ブランディングからメニューの改定、そして価格設定まで。さらに地元に愛されるお店になるために知恵を絞りました。
本格江戸前寿司を堪能できるお店づくり

北原:こちらは江戸前寿司のお店ということですが、先代が東京で修行をされたんですか?
矢野:昔新宿に「呉竹鮨」というお店があって、親父はそこで修行をさせてもらったんです。それでのれん分けという形で茅野にお店を出したのが昭和34年です。
リニューアルは平成27年。僕が社長になったのはその3年くらい前でした。店の売り上げが落ちていて、一番売り上げが多いころに比べたら半分近くにまで落ち込んでいたんじゃないかと思います。思い切って何か手を打った方がいいという話になってリニューアルに踏み切りました。
北原:茅野の駅前にカウンターで格好よく握ってくれるお寿司屋さんがある。どうしたらそのお寿司をおいしく食べてもらえるか、その格好いい姿を見てもらえるかと何回も話し合いをしましたね。
矢野:1階を仕切りのあるテーブル席と開放感のあるカウンターに変えて、2階の個室も掘りごたつにしてもらったことでだいぶ雰囲気が変わりました。
寿司屋なので、ハレの日とか特別な日に使ってもらえるようなお店ではありたいと思いますが、あんまり高級すぎるのもどうかという気持ちがあったので、そこをうまくイマージさんからお知恵を借りられたと思います。
ランチや家族連れで気軽に訪れてほしい
北原:僕としては高級店の方向性も捨てがたいなと思ったんですけど、やっぱり地元の方に気軽に使ってもらえるお店というのがよかったですね。リニューアルの成果出ましたか?
矢野:V字回復といったらと大げさかもしれませんけど、目に見えて回復しましたね。
ブランディングのときにターゲット設定について勉強させてもらって、ちょうど自分くらいの歳の人をターゲットにしたんです。40代半ばくらい。そうすればご家族も一緒にご来店いただけるのではと考えた。それが狙った通りの成果が出たという感じです。
メニューの見直しにあたっても、東京のいろいろな飲食店をご紹介いただいて、実際に食べに行ってみてとても参考になりました。
この価格帯とメニュー構成だったら満足いただけるんじゃないかと自信を持っています。特にランチはかなりしっかり考えました。
実はうちはコロナでそんなに売り上げが落ち込まなかったんですけれど、その中でも特にランチはずっとコンスタントにお客さんがきてくれているんです。
でもリニューアルで、区切られたテーブル席とか2階の個室も充実させておいたのもとても大きかったと思うんです。あのときやってなかったら今どうなっていたかと思うとゾッとします。

時代が変わっても、お客様を喜ばせたい
矢野:親父が始めた当時、諏訪には新鮮な鮮魚を仕入れられる場所がなかったので、夜行の汽車に乗って築地まで仕入れに行ったそうです。汽車で魚を持ってくるなんて今では考えられませんよね。
でも市場で生きた車海老を見て、当時茅野には生きたエビなんてなかったから、生きたまま持ち帰れたらみんな喜んでくれるだろうと思ったと。そこで紙にエビを包んで、それをポケットに入れて持って帰ってきたなんて話もあるんです。
どうしたらお客さんが喜ぶか、そういう気持ちは当然僕にもあります。
海鮮丼の特上はかなりインパクトがありますよ。かなり大きいです。せっかく食べにきてくださった方には、思いっきり喜んでもらいたいんです。
また魚介を生かしたほかのお料理にも力を入れています。なかでも天ぷらは油もブレンドするなどこだわっていて、エビは一番人気です。写真だと大きさがわかりにくいですが、実物を見るとかなりインパクトあります。これも一緒に行った東京のお店からヒントを得てできたメニューです。
今は流通がよくなって、海から遠い茅野でもいいものが手に入るようになりました。それでもこのあたりの人には潜在的に海のものに対する憧れがありますよね。おいしい海産物を食べたいという欲求があるので、寿司屋としてそこは大事にしたいと思っています。

I N F O R M A T I O N

インタビューの様子は動画でもご覧いただけます。