誰とも戦わない場所を目指すイノベーター
花屋がつくるおはぎの秘密

IMA-ZINE INTERVIEW VOL.31

元気なまちで、今(いま)を生きる、元気な人(じん)にインタビューするコーナー。

有限会社小林生花店
代表取締役 小林 貴明
Takaaki Kobayashi

INTRVIEW WITH KITAHARA JACKSON YU   TEXT BY TANAKA YUKIKO


下諏訪町の通称旧ジャスコ通りにある「KOBAYASHI FLOWER SHOP」。肥料を売る店として創業し、来年80周年を迎えます。その間、時代のニーズに合わせ扱う商品や営業スタイルを変えながら、諏訪の人々の生活に潤いを与え続けてきました。そんな同店に今年新たにカフェがオープン。その目玉となるメニューはなんと完全予約制の「おはぎ」。茅野の和食の名店「無名」のシェフが考案したトリッキーなおはぎが買えるフラワーショップ。その狙いを代表取締役の小林貴明さんに聞きました。


北原ジャクソン友(以下、北原):カフェはいつオープンしましたか? なんでカフェでおはぎなんですか?

小林貴明さん(以下:小林):2022年6月ですね。特に深い思いはないんだけど、寝てたら神様のお告げがあった。ボブディランの声でおはぎを作りなさいって。そう話すことにしてます(笑)。
花と同時に雑貨をずっとやってきたけれど、飽きがきたっていうのが正直なところかな。流行りを追うのに疲れるし、抱える在庫が多い。ここで1回船を軽くしようと思ったんだけど、花以外のものを100%やめてしまうと気軽に店に入ってこられなくなってしまう。花屋って敷居が高いでしょ? 高級店ていう意味じゃなくて、美容院とかカメラ屋とかもそうなんだけどふらっと入ることのない業種じゃない。花屋だけだったら花束を買う用事がなければ入ろうと思わない。複合専門業種。照準を少しずつずらして目的がなくても入れる、買わずに帰れるお店にしたかった。
他の花屋さんがすごすぎるから、ぼくはずっとブルー(オーシャン)でいきたい。レッドではいかない(笑)。

原点と現在の調和

小林:このお店は昔「マルサン小林肥料店」といって、ぼくが継いだときもまだ肥料を売ってたんです。ホームセンター的だったよね。花苗と肥料を売っていて、切花が少し。そこから変えようと思って雑貨屋を選んだのは、お金がなくて設備投資ができなかったからっていうのもあるし、空前のアジアンブームで、会長がそういうのを好きで気持ちよく買ってくれたっていうのがあった。
マルサンていうのはここの屋号で、今回のカフェのロゴのベースにもしたの。お店は継いだけれど、自分の親だって30年以上の年の差があれば価値観はもちろん違うからぶつかる。でものれんには磨きをかけていきたいじゃん。

北原:小林生花店といえばブルーとレインボーのローズですね。

小林:それも雑貨と同時期くらいですね。ヨーロッパに行ったときに売っていて、造花だと思って触ったら生花でびっくりした。その足で話を聞きに行ったらもう日本にも輸入が始まっているって言われたの。
日本に帰ってきて、あるとき青いバラを20本仕入れたんだけど、その時に花言葉を調べたら、まだ花言葉がなかったの。これまでは花言葉って生け花の先生とか開発したどこかの教授とか権威のある人が決めてきたもの。赤いバラなら情熱とか白いバラなら純潔とか、ね。調べてみたら「青いバラ」って英語圏では不可能の代名詞だったんですよ。だからそれが叶ったということで「可能性」って考えたわけ。そうしたら花言葉きっかけに買ってくれる人が増えた。それで調子に乗って、レインボーのバラには「奇跡」っていう花言葉にした。今はもう全国どこでも売っているけど、一番最初にイノベートした人っていうのは腐っても手足が取れても骨が折れても強いなって思っています。

王道では戦わない

北原:カフェは思った通りですか? 

小林:いや、想像と違ったなと思った部分もあるんですよ。
一つには、最初おはぎは仕入れようと思ってたんです。地元のお店から仕入れればそれはそれで地域貢献になるし、そういうつもりで事業計画書を書いてた。でも尊敬している人からリスクを負わないビジネスってなんなの、自分で作れって言われてこういう形になった。
もう一つは店の雰囲気も角を作って黒くすることでより広く多数なお客さんというよりは、より限定されたお客さんにスポットを当てようと思ってたんです。ドメスティックを除いて非現実的で洗練された。マリリン・マンソンが鼓膜破れるくらいの大音量で流れてる中でバスクチーズケーキを食べられるみたいなイメージだった。でも蓋を開けてみたら案外子ども連れでも来てくれるんで、意外でしたね。
今回どんな厨房にしますか? って聞かれて、この厨房はプリンタだって話をしたんです。無名の唐木正文のレシピが文章で送られてくる。それを工夫せず、カスタマイズせず、しっかりそのまま作れるデバイスとしてのキッチン。数値だけで作れる場所を目指したんです。ここまで外から見える形にすると緊張感があるよね。せっかく色を混ぜないで作ってもらったんで、そのままいけるようにね。
今現在おはぎは完全予約制。今後はこのテーブルに並べていくつもりです。この冬はぜんざいを予定しています。これも王道ではなくてちょっとトリッキーなぜんざい。
おはぎもあんこ、きなこっていう王道では戦わない。そこはもっとその道を極めたお店があるからね。例えばピスタチオの中にブルーベリー、ココナッツの中にラズベリーとかそういうやつです。赤はもう終わり、誰も戦わないところで勝負していきたいよね。

I N F O R M A T I O N

KOBAYASHI FLOWER SHOP
ROSE SHOP / MARUSAN cafe
〒393-0041
長野県諏訪郡下諏訪町西四王4997-7フラワービル1F
tel.0266-28-1188

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嬉しかったり。悲しかったり。
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